そもそも『痔』とは?

そもそも「痔」とは?
そもそも『痔』とは?

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寺田 俊明 Toshiaki Terada

寺田 俊明Toshiaki Terada

  • 理事長
  • 院長
  • 大腸肛門病センター長

寺田病院HP:
https://terada-hospital.or.jp/

肛門の病気の総称です
ですから
みなさんご存じの『いぼ痔』も『切れ痔』も・・・痔ですし
肛門のかぶれによるかゆみも・・・肛門の腫瘍も・・・『痔』です!

でも代表的な『痔』と言えば・・・・
やはり

  • 『いぼ痔』・・・・・・・・痔核(じかく)
  • 『切れ痔』『裂け痔』・・・裂肛(れっこう)
  • 『あな痔』『穴痔』・・・・痔瘻(じろう)

です。

この3つの『痔』で肛門科に来院する患者さんの99%を占めます。
まず・・・『痔』という漢字をひらがなでパソコンに入力するときに『じ』と入力しますか?
『ぢ』と入力しますか?
『じ』は『痔』に変換されますが、『ぢ』は『痔』に変換されません。

『語源由来辞典』でも

じ【痔】
肛門やその付近に生じる病気の総称。痔核・痔ろう・脱肛・切れ痔など。痔疾。

と書かれています。


でも・・・・
世間では『ぢ』と思っている人が多くないですか?
なんでだと思いますか?
知らぬ知らぬの間に『痔』は『ぢ』だと思い込まされているからです。
目から飛び込む情報はとても脳裏に焼き付くものです。
“某痔の製薬会社“の広告による影響がとても大きいですね。
赤太字の「ぢ」という字が血を連想させインパクトが非常に大きく、世間に『痔=ぢ』という印象を植え付けたのでしょう!広告としては大正解のキャッチコピーですね!

次に『痔』という漢字
『やまいだれ・病だれ』ですから病気に関係した漢字ですよね。
では中の漢字がなぜ『寺』なのかというと

その1「お坊さんが痔になりやすいから」
お坊さんが痔になりやすいから」ずっと正座をしてお経を読んでいるお坊さんが痔になりやすいという説

その2「寺で祈願しないと治らない病気だから」
「寺で祈願しないと治らない病気だから」なかなか治らないことから、仏様に治してもらわないと治らないと思われていた説

その3「お寺(天国)に入るまで治らないから」
死ぬまで治らないとしてお墓までもっていく病気と恐れられていたからという説

がありますが
「お寺(天国)に入るまで治らないから」そもそも・・・・・「寺」は「峙(そばだつ)」を表し、「じっととどまる」「動かない」といった意味があるそうです。
つまり、肛門付近にとどまる(峙)病なので、「痔」という漢字になったということです。

肛門にできる病気・・・・『痔』
こんな病気があります。

『痔』のことを理解するには『痔』のことを理解するには
まずは肛門付近の予備知識が必要です。
簡単にわかりやすく・・・ご説明していきましょう!

人間の体のつくり

口は食事の『入り口』
肛門はその食事が消化されたあとの排せつ物の『出口』です
ですから『入り口』と『出口』同じような構造をしています
『喉元過ぎると熱さ忘れる』という言葉があります
熱い おでん を口の中入れると熱くて大変ですよね
でも飲み込んでしまうと熱さはなくなります。

熱くなくなったすなわち『口の中』=『肛門のちょい奥(肛門上皮部)』と
『くちびる』=『肛門のまわり』は、熱さや痛さを感じ取る敏感な部分ですが
『喉元過ぎて、食道に入る』=『直腸部分』は、熱さや痛さを感じ取る神経は無い部分なのです。
"人間の体のつくり"
面白いですね!『入り口』と『出口』同じようにできています!

『歯状線(しじょうせん)』この、喉元の部分が おしりだと『歯状線(しじょうせん)』という部分になります。 『直腸』と『肛門』の境目ですね。 この『歯状線(しじょうせん)』に関しては後でまた詳しく話します。

肛門の付近の血流

さて、次に肛門の付近の血流に関して、お話しておきましょう
心臓は身体のすみずみまで血液を送るポンプです。
その心臓から排出された血液は全身を巡り、肛門や足先にも到達し、末端の臓器にも栄養を与えています(栄養動脈)。そして、その血液はまた心臓に戻ります(静脈還流)動脈血場百傑

血流しかし・・・・肛門が心臓と同じ位置にある四つ足の動物は、それが楽ですが、2足歩行で生活する人間は心臓より下に肛門があり、肛門まで行った血液がまた重力に逆らって心臓まで帰ってくるのが大変です!
だから、だんだん還流が悪くなってくる方がいても当然なのです。

静脈の還流が悪くなれば、静脈の逆流を防ぐ便が壊れて、そこに静脈瘤(血管の腫れ)ができます。

静脈瘤(血管の腫れ)すなわち、2足歩行で生活する人間はそもそも、肛門を養っている血液が滞りやすい(うっ血しやすい)環境にあるということです。

便秘さらに、便秘がひどかったりして、排便の時に、力みで肛門に負担をかけると、肛門から心臓に帰る血管(静脈)の還流がさらに悪くなり、逆流をしないようにしている弁が壊れて、静脈が膨れて(静脈瘤)きやすくなってしまうのです。
いわば人類の進化が『痔』の発生と考えても過言ではないですね!人類の進化

肛門付近の血管の走行(位置)

次はその肛門付近の血管の走行(位置)についてのお話です。
肛門付近の血液は直腸(腸の最終)付近の血管から枝分かれしたものです。
主に太い動脈(栄養を供給する)を肛門の下から見ると3時、7時、11時に分布されています。

肛門付近の血液

3時、7時、11時

ですから、さきほどの話した『肛門部の静脈瘤』ができやすいのは、この3か所の部位というわけですね。この痔核を『主痔核』といいます。 そして大きな血管が渋滞を起こし、脇道を作り、その脇道も渋滞してくると、脇道にも静脈瘤ができてきてしまいます。この痔核を『副痔核』といい、結果的にひどくなってくると360度全周にわたり痔核ができてきてしまうのです。

渋滞

『副痔核』

肛門の機能

次に肛門の機能です。
当然肛門は『便』の出口としての機能が一番の働きです。
ですが、いつもいつも所かまわず『便』を垂れ流すというわけにはいきませんから、一度『便』を貯めておくところが必要です。
肛門の奥(口側)にその場所があります。
食事が、口→食道→胃→小腸→大腸→肛門に至るまで
途中で栄養が吸収され、水分が吸収された残渣物が『便』として大腸の最後の場所『直腸』で一度貯められます。

『直腸膨大部』その『直腸』の一番下。肛門の上に、少し膨らんだところがあります。
この場所が『直腸膨大部』といって便を溜めておくところなのです。
そしてそこは、筋肉により、肛門が常に締められていて『便』を漏らさないようになっています。
でも・・・肛門を常に24時間締めておいて!と言われても疲れちゃいますよね。
ですから、無意識に常に『肛門を締めてくれている筋肉』と『肛門を意識的に締める筋肉』の2重構造になっています。

この

『無意識に常に肛門を締めてくれている筋肉』→『内肛門括約筋』
『肛門を意識的に締める筋肉』→『外肛門括約筋』
といいます。

しかし・・・人間の身体ってよくできていますよね!

でも筋肉だけでは実は肛門は“ピシャっ”とは締まりません!
肛門を確実に締めるには、筋肉のほかに、固い筋肉の内側部分にクッション的な粘膜のたるみがあり。水様性の便でも漏れないようになっています。

『粘膜クッション』この『粘膜クッション』をわかりやすくするためにコンビニの入り口の自動扉を連想してみてください扉には必ず ゴムが付いています

この部分

ピシャ

ガシャンもし・・・ゴムがなく、ガラスだけならピシャッと扉は締まりませんよね!(ガラス同士がガシャン!と)
ゴムがあるからピシャッと閉まるのです。