- いぼ痔とは
- 肛門の機能
- 内痔核の発生
- 内痔核は治療が必要?
- 内外痔核
- 脱肛とは
- 脱肛の症状と分類
- いぼ痔(痔核)を治すということ
- 「入院痔核手術」と「日帰り痔核手術」
- いぼ痔(痔核)と大腸がん
- いぼ痔(痔核)の治療(出血)
- いぼ痔(痔核)の治療(外痔核の痛み)
- いぼ痔(痔核)の治療(脱肛)
- 嵌頓(かんとん)痔核とは
- ALTA(ジオン®)注射療法とは
- 痔核根治手術の実際
- 最新の痔核根治手術
- 入院痔核手術の実際
- 術後の排便
- 術後の痛みと出血
- 術後創部の処置
いぼ痔とは
『いぼ痔』は俗称であり、医学的な正式病名を『痔核』といいます。
いわゆる肛門付近の動静脈瘤 血管の腫れです!
ではなんで腫れてくるのでしょう?
それは人間が2足歩行で生活しているからです。
心臓から排出された血液は全身を巡り、肛門や足先にも到達し、その血液はまた心臓に戻ります(静脈還流)
しかし・・・・肛門が心臓と同じ位置にある四つ足の動物は、それが楽ですが、
2足歩行で生活する人間は心臓より下に肛門があり、肛門まで行った血液がまた重力に逆らって心臓まで帰ってくるのが大変です!
だから、だんだん還流が悪くなってくる方がいても当然なのです。
人間が排便する、2足歩行している動物であり、排便で肛門を使っていれば肛門の奥の便を溜めておく部分が多少腫れてくるのは当然で、それが『いぼ痔(痔核)』の発生部分です。いぼ痔が腫れて 出血したり、痛くなったりした症状が出てくると病気としてとらえます。
肛門の機能
当然肛門は『便』の出口としての機能が一番の働きです。ですが、いつもいつも所かまわず『便』を垂れ流すというわけにはいきませんから、一度『便』を貯めておくところが必要です。その場所が『直腸膨大部』です
そしてそこは、筋肉により、肛門が常に締められていて『便』を漏らさないようになっています。
無意識に常に『肛門を締めてくれている筋肉』と『肛門を意識的に締める筋肉』の2重構造になっています。この『無意識に常に肛門を締めてくれている筋肉』→『内肛門括約筋』『肛門を意識的に締める筋肉』→『外肛門括約筋』といいます。
内痔核の発生
肛門の閉鎖機能は筋肉のほかに、固い筋肉の内側部分にクッション的な粘膜のたるみがあり。水様性の便でも漏れないようになっています。
コンビニの入り口の自動扉のゴムの部分と一緒です。ゴムがなく、ガラスだけならピシャッと扉は締まりません。
ゴムがあるからピシャッと閉まるのです。
つまりこの『ゴムの部分』 が 『粘膜クッション』ということになります。
でも・・・
1年のうちに夏の暑い日もあれば雪が降る寒い日もあります。
その“ガラス扉”に付いている“ゴムの部分”も何年か経ってくれば当然劣化してきて、破けたり、溶けたりしてきます。そうなると、、、“ゴムの部分”はごつごつしてきて“ピシャッ”と扉は締まらず、隙間風が入ってきてしまいます。
肛門も“ガラス扉”と同じように・・・・長い間、便秘で力んだり、踏ん張ったり、下痢、妊娠・出産で強く力んで肛門に負担がかけていくと・・・・
“粘膜のたるみ”の下にある静脈還流が悪くなり 便を押さえておく『粘膜のクッション』がうっ血して、さらに腫れて充血してきたものが『内痔核』です。
つまり『粘膜クッション』=『自動扉のゴムの部分』
『内痔核』=『自動扉のゴムの部分の劣化』です。
でもこの部位が膨らんできても痛みを感じない部分なのですから、痛くないからこそ注意を怠ってしまい、自分の知らないうちに内痔核は膨れているわけです。
内痔核が徐々に大きくなってきても症状はない→症状がなければ悪くなってきているのもわからない→症状が出てくるまで、肛門に負担をかけて悪くしてしまうのです。
しかし、さらに内痔核が大きくなってくると 内痔核から出血するようになってきます。
例えるならば 風船に赤い絵の具の液体を入れて膨らませ・・・表面を擦ることで その弱い部分からじわっと赤い液が出てきてしまうイメージです。
『いぼ痔(痔核)』は『粘膜クッション』の内部の血が充血してくるわけですから、腫れが強くなってくると、やはり風船のように じわっと出血するようになり、
もっと大きくなって 破裂すると 大出血をしてしまいます!!
しかし・・・破裂するといったんしぼんで、しばらくはおとなしいのですが、また同じように腫れてきます。それがを返されるとさすがに、だんだん貧血になってきてしまうわけです。
ですが・・・なかには出血の症状に気づかない方もたくさんいますし、実際に出血せず膨らんで大きくなっている『内痔核』もよく見かけます。実際に、わずかに出血していたところで、その方が気づいてないということも多いです。
内痔核は治療が必要?
では自分が『いぼ痔(痔核)』と知ってしまった・・・もしくは『いぼ痔がありますよ』って気づかされてしまったあとはどうしましょう?
『いぼ痔(痔核)』は病気ですか?
→いいえ! すべての痔核が病気ではありません!
『痔核ができるひと』と『痔核ができないひと』と考えるのではなく
『痔核はみんなにできる!』『痔核ができない人なんていない』ということです!
どういうことかというと結果的に一生のうちに 『痔核の症状』が出るかどうかのということです。ですから自分に痔核があるなどと知らずに一生を終える人だっているでしょうし、症状のない痔核があるからと言ってなんだっていうの?ということです
つまり、、、、痔核自体による症状(痛み、出血、脱肛、かゆみ・・・・など)が現れてはじめてそれが病的な痔核といえるのです。
内外痔核
ですが・・・・知らぬ知らぬの間に『内痔核』に負担をかけているうちに、
さらに内痔核が大きくなり外痔核部分まで腫れてくると肛門の外から触るようになり、痛みも伴うようになります。これが『内外痔核』です。
肛門を触ったときに『あれっ!痔が出てきた!大変だあ』となるわけです。
『先生、急に痔ができちゃいました!』と来院される方も多いですが、結局内痔核ができ、それが腫れて→引いてを繰り返し、外痔核まで腫れるようになるには30歳の方なら30年、50歳の方なら50年かかっている痔核というわけですね。
内外痔核をわかりやすく例えると「氷山」です。海面の下で氷ができたとします。
海面の下ですと海の上から氷があるのはわかりませんよね。これを『内痔核』と例えましょう。
氷がだんだん大きくなってくる→内痔核が大きくなってくると海面の上に氷が浮かんで出てきます。この部分が『外痔核』
つまり『氷山』全体が『内外痔核』というわけです。
脱肛とは
『内痔核』や『内外痔核』の状態でさらに圧力が加われ続けると・・・・
結果的に『痔核』が筋肉とくっついている土台の部分(痔核と内肛門括約筋の間の靭帯)が緩るんできてしまいます。すると・・・肛門の外に大きく『痔核部分』が飛び出してきます。
勘違いしてはいけないのは・・・・内外痔核の状態は脱肛ではありません!!あくまでも『脱肛』は読んで字の如く、『肛門から脱出する』という意味です。
外痔核はもともと肛門の外のものなのですから、本来肛門の中にある
内痔核が肛門から脱出するという現象を『脱肛』と言います。
これは例えるならば 雪崩(なだれ) と同じです。
ただし、積雪した雪の表層だけ 腸の層の一番表層の『粘膜部分』だけの脱出です。
ですから・・・もともと中にあった内痔核部分は押せば肛門の中に入るわけです。
(外痔核部分は入りませんが)
脱肛の症状と分類
脱肛して『痔』が出っぱなしだと、『外痔核』が腫れて痛くなったりしますから、人間は『痔核』を肛門の中に押しこみます。これを『還納(かんのう)』といいます
この脱肛の分類が痔の有名な分類で『Golliger分類』といいます。
ですから痔核の分類は脱肛の程度の分類であり、決して進行すると痛みが強くなったり、出血がひどくなるという分類ではありません!
『脱肛』を呈するようになるといろいろな症状がでてきます。
脱肛の症状→①脱出を手で戻すめんどくささ
① 肛門のしまりが悪い→腸の液や便の漏れ→下着を汚す→肛門周囲の皮膚のかぶれでかゆい
② 残便感、違和感、便の切れが悪い
ですが・・・このような状態になって、やっと自分が『いぼ痔(痔核)』であることに気づかされ軟膏を使い始める方も多いのですが・・・残念ながら緩くなってしまった痔核の土台の部分(痔核と内肛門括約筋の間の靭帯)は、もう軟膏や坐剤では治らないのです・・・ですが、痛くなければ、違和感が強くてもまだ放置される方も少なくありません。それでも良いという方は軟膏や坐剤をしっかり使い肛門に負担をかけないことです。
いぼ痔(痔核)を治すということ
基本的には 自分がどのくらい『いぼ痔(痔核)』の症状が嫌なのか?という点につきます。医師や他人から言われるまでもなく、治したいくらい嫌ならば治せばいいのです(痔で命まで失わないですから・・・『いぼ痔(痔核)』を放っておいても『がん』にはなりません。
ただし、【治す】という意味合いを考えたときに・・・
数十年かけて作ってしまった『いぼ痔(痔核)』をいくらその時から気を付けてもお薬をつかってもなくなるわけではありません!
つまり
① 症状がなくなる(もしくは軽度になる)=治った
と考えるのか
② 『いぼ痔』がなくなる=治った
と考えることで 治療の最終ゴールは異なってくるのです
まず① 症状がなくなる(もしくは軽度になる)=治った
と解釈するならば、症状をA:出血 B:痛み C:脱肛の3つに分けると
C:脱肛は治らない もしくは治さないとあきらめるのが無難です。
風邪だって何度もひいたり、一生風邪ひかないなんてことはないのと同じように
症状が繰り返すことは仕方ないと考えるべきです。風邪をひいたら風邪薬を服用するように 痔核もその都度 軟膏・坐剤にて腫れを引かせればいいのです。
さらに、肛門への負担を減らせるべく、便秘や下痢の改善に努め、排便の時間を極力短くする習慣も大切です。腫れが引いてくれば、痔核の腫脹は減少し、痛みも出血も軽減してきます。入浴にておしりを温めるのも有効です。しかし、痔核は無くなったわけではないので、何度も繰り返し、だんだん症状が起きる間隔が短くなってきてしまいます。
②『いぼ痔(痔核)』がなくなる=治った
と解釈するならば。長年かけて作り、すでに症状を呈している『痔核』は取ってしまうしか無くなりはしません。となると手術療法による痔核切除が基本となるわけです。
さてここで・・・痔核切除と言っても、『日帰り手術』で痔が治ります!とか『入院手術』が必要です!と言っている医療施設を、目にすると思います。
どこが違うのでしょうか?そもそもやっている手術は同じなのでしょうか?
「入院痔核手術」と「日帰り痔核手術」
つまり根本的に『いぼ痔(痔核)』を無くす→切除するとはどういうことでしょうか?
氷山のたとえですと、氷山の塊(かたまり)ごと全部を取ると言うことです。
でも・・・氷山の塊ごと取るということは『いぼ痔(痔核)』でいうと
直腸下端部にできた内痔核の腫脹を切除するということですから、肛門の奥の方まで切除しなくてはいけません。
そのためには肛門を締めている肛門の筋肉を弛緩(ゆるめる)ための麻酔が必要です。
→肛門を無意識に締めている筋肉(内肛門括約筋)を弛緩(緩める)させるには腰椎麻酔、もしくは硬膜外麻酔、全身麻酔により一時的に筋肉を麻痺させる必要があります。
そのような麻酔をかけた後は、安静、安全のために『入院』が必要となります。
逆に・・・『日帰り手術』は主に入院施設のないクリニックが多いと思います。つまり奥まで効かす麻酔を使用したときに入院していただく入院病床(ベッド)がない医療施設が、局所麻酔で切除できる範囲を切除する手術だということです。
つまり氷山の例えですと
『日帰り手術』で局所麻酔を用い切除できる範囲は
この部分だけ・・・・ということになるわけです。
では氷山の下の部分はどうするか?というと
『内痔核』部分はそのまま ・・・・・もしくは 氷山の下(内痔核)部分にさきほどの硬化療法のALTA(ジオン®)注射をして、氷を海面下に沈める感じです
もちろんこの方法でもしばらくは脱肛も出血もおさまり、一時的に症状的には落ち着きます。しかし、内痔核部分が大きな痔核の場合や、注入した薬の効果が薄れてくると、と症状が再びおきてしまいます(再発)!
つまり・・・
『入院手術』と『日帰り手術』では同じ手術をしているのではありません!!
氷山の塊ごと(内外痔核すべて)切除する入院手術と
浮かんでいる(外痔核)部分だけを取り、沈んでいる(内痔核)部分に硬療
法をする方法では根治性(完全に治る)が全く違ってくるのです。
それでも・・・・『日帰り手術』は確かに入院しなくてもいい分、仕事や家庭に穴をあけることがないのでお気軽にできる感があります。症状もごくごく軽度の方や、『定年になったらもう一度ちゃんとした手術やろう!』って思い、一時的に『日帰り手術』で良くしておくという考え方もありです!
『入院が良い』『日帰りが悪い』ということではなく、
『いぼ痔(痔核)』の程度によって治すという根治性をどのくらい求めるのかの判断は、患者さん自身の考え方です。
いぼ痔(痔核)と大腸がん
『出血』や『力んで排便している』 『便がスムーズに出なくなってきた』という症状が『大腸がん』によって引き起こされてはいないか?ということです。
ただの『痔』とおもっていたら 大腸がんだった!なんて話は多々あります。
『大腸がん』は日本で年々増加しています。
厚生労働省の『人口動態統計』での『部位別がんの死亡率』の推移です。
おそらく、出血しても『ただの痔だろう』とか便が出しづらくなってきても『年のせいで便秘になってきたかな』とか考えてしまう方が多いためと思われます。
『排便時出血』や『下血』を呈した際はたとえ「痔」があったとしても 大腸カメラを必ず施行してください(過去2年以内にしていれば大丈夫です)
結果的に『大腸カメラ』で腸に腫瘍や炎症などの出血病変がなければ、出血の原因は 『痔』のせい『肛門』のせい にして結講です!
いぼ痔(痔核)の治療(出血)
軟膏・坐剤では出血が止まらなかったり、一度出血が止まってもまた出血したり、の繰り返しの方はまず内痔核の中の血管を潰す方法。注射で痔核の中に薬液を入れて固めるのです。風船のたとえだと『風船の中の絵の具を固める』 ALTA(ジオン®)もしくはPAOスクレーという硬化療法が有効です。
天ぷらを作った後の油も固める粉ありますよね。 そんなイメージです。
しかし、いずれにせよ出血や痛みの症状が治まっても痔核 そのものは無くなったわけではありません。
風船で言うと、しぼんだだけです。もっとも硬化療法だっていつまでも効果が続くものではなく、大きな痔核には効かないこともあります。
いぼ痔(痔核)の治療(外痔核の痛み)
痔は痛いというイメージがありますが、そもそもいぼ痔(痔核)で痛むのは外痔核の腫れです。(内痔核は痛みません)外痔核が腫れて血豆状になったものを『血栓性外痔核』 といいます。強い力みや、下痢で何度もトイレに行ったり、スキーなどで肛門を冷やした後に、急に外痔核のみ腫れがひどくなる(内痔核はあまりひどくないのに)ことがあります。『氷山』の例えだとこうですね。
これは、肛門の細い血管が破れて血栓(血豆)を作ってしまう状況です。外痔核部分の腫れですので、腫れが強くなってくると痛みが強くなってきます!
ただ、この場合は内痔核の繰り返しの結果で内痔核が肛門の外にもできてきた。というものではなく一時的な外の腫れですから外痔核の腫れを抑えるために軟膏を塗って、肛門を温めておけば自然と外痔核はしぼんできます。(よっぽど大きく腫れて血抜きしてあげなきゃいけないもの以外は保存的に治ります)。しぼんでくると痛みは引きます。
いぼ痔(痔核)の治療(脱肛)
脱肛は軟膏・坐剤ではもはや改善はしません。内痔核を脱肛させないようにするには
① 脱肛を起こしている(痔核)を切除して無くす
② 『痔核』が筋肉とくっついている土台の部分(痔核と内肛門括約筋の間の靭帯)の緩みを治す(緩まないようにする)
必要があります。
① を選択するのであれば痔核の切除。いわゆる手術
② を選択するのであればALTA(ジオン®)注射療法です。
ただし、ALTA(ジオン®)注射療法は内痔核の脱肛に限ります。外痔核が大きい痔核や、裂肛(切れ痔)、痔瘻(穴痔)、肛門ポリープなどを併発している場合はできません。
嵌頓(かんとん)痔核とは
痔核が「脱肛」を起こすようになってきても、痛くなければ、違和感が強くてもまだ放置される方も少なくありません!脱肛した『いぼ痔(痔核)』を排便のたびに戻す毎日・・・・最近は排便の時以外にも、立っててもでるようになってきた・・・・とか
ゴルフのパターをする時、ラインを見ようと腰を下ろした途端に脱肛とか・・
もうめんどくさい・・・と思いながらも放置していたら・・・
ある時急に脱肛した痔核部分の腫れがひどくなり、肛門の中へ入りづらくなって、みるみる腫れてきて激痛になってきた!!!と突然とんでもないことが起こることがあります!!(これが いぼ痔=痛い というイメージを植え付けている原因と思います。
肛門の外に出た痔核が肛門の筋肉で締められて外痔核部分がさらにうっ血し、激痛を呈します。この状態を『嵌頓(かんとん)』と言います。
これを例えるならば・・・・・
指にはめた指輪が抜けなくなった!!
指の先が青く腫れて痛くなった!!という状態といとわかりやすいでしょうか?
嵌頓状態になってしまったら・・・・
痛いからと言って、すぐに手術をすることは賢明ではありません!まずは、肛門科の専門の先生に診察室で、もしくは手術室で戻してもらいましょう(還納)。
そして、痛み止めや、軟膏、坐薬を使用しつつ、入浴や坐浴で腫れた部分の血液循環を良くさせて腫れを引かせるのが重要です。腫れが引いて痛くなくなっても、再び脱出して痛くなる可能性があるため、いずれは根治術をしたほうが無難です。
つまり『脱肛』するようになったら軟膏・坐剤や保存的には治らないわけですから・・・再び「嵌頓状態」起こす前にさすがになんとかしておきましょう!
ALTA(ジオン®)注射療法とは
ALTA(ジオン®)注射療法は今から20年くらい前に中国から入ってきた
『消痔霊』という中国にあった注射液を日本国内で改良した内痔核部分を固める注射療法(硬化療法)です。四段階注射法という 内痔核分を4つに分画して、浅くもなく深くもない部分に的確に注射をすることが必要です。
するときちんとALTA(ジオン®)が注入された内痔核は、内部の血管が潰され、出血をしやすかった痔核は出血しにくくなります。そして筋肉と粘膜クッションの間の緩み部分(いわゆる表層雪崩の下の部分)がALTA(ジオン®)の炎症効果による癒着で固定されるので内痔核部分の脱出が改善されます。
しかし、ALTA(ジオン®)は炎症を起こして固めるのですから、痛みの神経がある『外痔核』部分には打てません!打ってはいけません!
もし・・・ALTA(ジオン®)の薬液が外痔核に流入してしまったら外痔核部分が腫れてとてつもない痛みとなってしまいます。
外痔核に薬液が流れないように内痔核部分にALTA(ジオン®)を注射すると、『内外痔核』は内痔核が少し縮小し、痔核全体として口側に引きずり込まれるため、外痔核は肛門の淵からちょっと入ります。
しかし、外痔核が無くなることはないのですから、大きな外痔核はあまり変わらないですし、小さな外痔核は少し良くなった気にはなるだけです。
ですからALTA硬化療法は『内痔核の出血』、「内痔核の脱肛」には有効。ALTA療法を『内外痔核』に注射する場合は痔核の大きさが『内痔核部分』>『外痔核部分』に有効といえます。
ALTA硬化療法の出血や脱肛の再発率は各病院、クリニックにより異なります。
大きなものまでALTA(ジオン®)のみで施行している施設は再発率が高いでしょうし、小さく、まだ症状も乏しい痔核に対してまでALTA(ジオン®)を施行している施設の再発率は低いでしょうから。
きちんとした適応を踏まえ、適切に注射を施行すればそれなりの効果は得られる手法と考えます。ですからALTA(ジオン®)療法の施行は、内痔核治療法研究会https://zinjection.net/主導で開催される「四段階注射法講習会」を受講した医師に限定されています。
当施設は内痔核治療法研究会の見学指導施設であり、寺田院長は「四段階注射法講習会」の講師を務めています。
痔核根治手術の実際
『入院手術』は内痔核も外痔核もすべて切除し、栄養を痔核に与えていた根部の血管を根部で縛りますので、再び同部位に痔核ができ、出血や脱肛をするようになるには時間が相当かかります。要するに根治的な意味合いが強い手術術式です。
本来の「痔核根治手術」です。
直腸粘膜を吸収糸(溶ける糸)で直腸粘膜→肛門上皮まで縫っていきます。この糸はおおよそ1週間~10日くらいで溶けてくる糸であり、抜糸の必要はありません。
『日帰り手術』は
(a)硬化療法(ALTA療法)のみ
(b)肛門の外にある外痔核部分のみ切除し、内痔核部分に硬化療法(ALTA療法)を注射する方法
(c)肛門の中までの外痔核部分を切除し、内痔核部分に硬化療法(ALTA療法)を注射する方法が一般的です。
『日帰り手術』でも(a)は痛みはありませんが外痔核を切除する手術(b)(c)は痛みを感じる外痔核部分つまり肛門皮膚→肛門上皮を切除していくわけですから痛みはあります。
最新の痔核根治手術
最近は「根治的な痔核根治手術」と「外痔核切除+ALTA注射」の各々の良いとこどりをする手術。すなわち、大きな痔核には内痔核まで切り上げ根治性を高め、そうでない痔核には外痔核切除+内痔核にALTA注射という方法をとる方法が最新の痔核根治手術です。こういう術式を選択できる『肛門の専門医』のいる病院で良く話を聞いて相談するのがよろしいでしょう。
入院痔核手術の実際
『入院手術』におけるもっとも優れた点は、『安心』です。
『いぼ痔(痔核)』における入院期間に関しては各医療施設によって考え方や、やり方は異なるとは思いますが基本は「術後創部の安静」と「創部の処置の指導」「術後排便指導」です。
手術後における『痛み』や『出血』の不安は手術当日に最も強いものです。また、肛門科の手術では『術後はじめての排便』『術後はじめての入浴』に不安を持つ方も多いでしょう。『術後の創部』も排便をしながらゆっくり治していかなければならず、処置を自分でできるようにしておかなければいけません。
完全に創部が治癒するのは約4週~8週かかります。
その間中、入院しているわけにはいきませんから、せめて数日だけでも、安心して家に帰っていただくために「創部の処置の指導」と「術後排便指導」をするわけです。
術後の『排便のコントロール』が上手にできず、硬い便や気張って排便をした際に、手術の傷が痛くなったり、縫ったところが裂けて出血してしまいます。
術後の排便
肛門術後の最も大事なポイントは排便コントロールです。 術後1か月ほどで創部はしっかりしてきます(縫合した創部が開き、術後出血をしてしまう心配がなくなります)ので、それまでは創部を安静に保つため、強く力んだり、硬い便をしないよう努めます。
運動、アルコール、遠方への旅行は控えてください。術後1か月くらいで問題無いようなら緩下剤を徐々に減量し、本来のご自分の普通便に近づけていき、肛門をストレッチしていきます。(怖がってストレッチしないと伸び縮みが悪い硬い肛門になってしまいます。元々便秘の方は緩下剤をやめる必要はありません)
術後の痛みと出血
通常術後2週間ほどで炎症が引いてきます。入浴で下半身を温めることも有効です。
痛みはだんだん良くなり、出血量もだんだん減ってきます。当院痔核術後の統計(約2万人)ではおおよそ術後2週間で痛みのピークの半減→次の2週間でさらに半減になり、術後1か月ほどでひりひりした、皮膚の痛み程度になり術後6~8週間で、ほぼ痛みは無くなってきます。
術後創部の処置
指の柔らかい部分で優しく創部を洗浄し、便がべったり付着していない程度が理想です。 (浸出液やわずかな出血まで落とす必要はありません。)洗浄後に押し拭きで水気をとり、決して擦らないことです!(軟膏は油分であり、水気があるとはじいてしまいます)術後10日程で縫合糸がほどけてきます。ちょうどそのころに痛みが良くなってきて油断がでてきます。『強く力んだ瞬間に手術の傷が裂けて出血!』なんてことがおきてしまいます。(図のレッドゾーン)黄色→青色ゾーンになるまで油断せず、肛門に気を使ってください。