大腸ポリープ切除

大腸ポリープ切除とは

ポリープというと何となくかわいいイメージがありますよね。ポリープは粘膜組織の盛り上がったものの総称ですが、多くの場合、良性のものに使われることが多い言葉です。ポリープは「腫瘍」と「腫瘍でないもの」に分類されます。

「腫瘍」は放置しておくと大きくなってきて、悪性化するものも出てくるので切除しておくことが必要です。ポリープの形状は平らなものからくびれがあるものまで様々です。

大腸ポリープ切除とは

基本ポリープは切除しておいたほうが良いのですが、「腫瘍でないもの」つまり悪性化→癌化しないものまで切除する必要はありません。

大腸ポリープができる原因

大腸ポリープができる原因「腫瘍でないもの」の多くは炎症によって粘膜が盛り上がり膨れたものです。
お餅を焼くとぷくっと膨れるのと同じ原理ですね。しかしそれは正常な組織が熱で膨れただけなので悪さはしません。

大腸に限りませんが「腫瘍」ができる原因は正常細胞に何らかの外的な因子が加わり細胞が変異を起こしてしまうからです。その細胞が分裂や増殖を繰り返し正常な細胞を侵していきます。
大腸の断面は地層と同じです。大腸の腫瘍の多くはその一番表面の「粘膜層」から発生します。腫瘍を『タケノコ』と例えてみましょう。地表の下にまだ潜っているタケノコいわゆる、粘膜内から表面に出ていない腫瘍は大腸カメラでも認識できません。

粘膜層

粘膜を突き抜け、地表に出てきてやっと認識できるのです。
大腸は腺管構造という構造をしています。この腺管構造の配列が崩れてくると腫瘍化してきます。それを「腺腫」といいます。「腺腫」の段階ではまだ良性ですが、変異、分裂が強くなったものを癌(腺癌)といいます。はじめは腺腫内の一部が癌化しただけでが、だんだんと増殖して腫瘍全部が癌化してきてしまうのです。

腺腫内腺癌

大腸ポリープ切除方法

ワイヤーをポリープの首に引っかけて切除(ポリペクトミー)します。そのため、盛り上がりがあるポリープは切除しやすいのですが、平坦型で盛り上がりのないポリープは粘膜内に水を入れることで浮かせて盛り上がりを作り切除します。ただしこの方法もある程度の深さまでしか切除できません。というより深く切除すればポリープは切除できるかもしれませんが腸に穴があき(穿孔)、腸の中の細菌がおなかの中にばら撒かれ腹膜炎を呈してしまう恐れがあり、ある程度の深さまでしか切除できないのです。
ですから、それ以上深い腫瘍の場合は切除しきれないということになります。

大腸ポリープは切除する必要がある?

前述でも書いたように「腫瘍でないもの」は切除する必要はありません。では「腫瘍」と「腫瘍でないもの」の区別はどのようにすればいいのでしょう?
基本大きく育ってくるものは「腫瘍」の可能性があります。「腫瘍でないもの」は大きく育たなく自然に消退してしまうものも多いので、まずは大きさで判断します。
また粘膜面の拡大ができる内視鏡機械だとその粘膜面の構造(ピットパターン)により「腫瘍」かどうかの判断ができます。つまり1,2㎜の小さなポリープは「腫瘍でないもの」の可能性も高く急いで切除する必要はありませんし、無駄な切除により粘膜を傷つけてしまうわけですから「腫瘍でないもの」まで切除するのはお勧めできません。

大腸ポリープのがん化リスクについて

だいたい多くの医療機関では径が5mm以上のポリープは切除を推奨しています。それは5mmを超すと癌化している確率が高くなってくるからです。
論文によってその確率は若干違いますがおおよそ

径 5mm未満 約0.5%
径 5~10mm 約5%
径 10~20mm 約20%
径 20~30mm 約25%
径 30mm以上 約30%

と考えても5mm以上のポリープ切除が無難です。
よく5mmと10mmは2倍しか変わらないと考える方が多いですが、ポリープは当然立体なので、縦×横×高さを考えれば 2×2×2=8倍の違いがあるわけです!

径が10mmを超えると癌化率が急に高くなります。ですからポリープ径が10mm以内に切除しておきたいものです。

検査・切除前後の注意事項

大腸内視鏡検査をする前には腸管内をきれいにしておくことが重要です。便だらけや、濁った水の中では病変を確実に認識できませんからね。そのために腸管洗浄剤を飲んで腸内を洗い流します。
昔は味も悪く4L近い量が必要でしたが、現在は飲みやすく改良され量も1~2Lくらいできれいになります。ただし、もともと腸の動きが悪い便秘傾向の方はきれいになるまでの時間も長くかかってしまいます。そのため検査の数日前から便を作らないようにする食事(低残渣食)にて準備しておくことも必要です。ご高齢の方や心臓などの持病をお持ちの方は入院設備のある病院での検査が安心です。

日帰りポリープ切除と入院ポリープ切除

内視鏡下大腸ポリープ切除(ポリペクトミー)は基本、痛みはありません。腸には痛みの神経がないからです。ですが、切除した部分には当然ポリープを養っている栄養血管があり、ポリープ切除に傷口をクリップで閉創しても、時間が経って出血を来たすことがあります。ポリープが大きいほど栄誉血管も太く、10mmを超えるポリープや複数個切除した後では出血の可能性が高くなり、また腸の傷が深い場合はそこから腸壁外(腹腔内)に大腸菌が漏れ腹膜炎を呈してしまうことも稀にあります。大きなポリープを切除した後は入院によって食事を止め、切除部位の安静を測り1日~2日経過を診ることをお勧めします。小さなポリープ(10㎡m以下)の場合は日帰りでポリープ切除を行っているクリニックも多くなってきましたが、合併症を起こした場合の後方病院と連携しているか確認することが大事です。
ですからもともと入院施設のある内視鏡専門病院での治療が合併症を生じた場合すぐに対処・治療できるため安全面ではお勧めです。

検査当日ポリペクトミー

大腸内視鏡検査時にポリープが発見された場合、その場で切除(ポリペクトミー)を施行してくれる施設が増えています。(ただし内視鏡手術ですから検査申し込み時点で書面で切除希望の承諾をいただいている方に限ります)。

ポリペクトミーと保険加入について

生命保険に加入されている方も多いと思いますが、検査やポリペクトミー前に必ずご自分の保険加入プランを確認することをお勧めします。クリニック等での日帰りポリペクトミーでは保険が下りないものを多く、入院が義務つけられている場合は日帰り入院含め入院施設を併設している病院での治療で、保険の返戻金が適応されます。

大腸ポリープ切除後の食事や生活

切除した腸粘膜の修復には14日くらいかかります。大きなポリープの場合は潰瘍化して術後1週間くらいが出血しやすい時期になります。ですから、ポリペクトミー後のアルコール摂取、力仕事や腹圧のかかる仕事や激しい運動(ゴルフなど)は1週間は中止です。