肛門科の入院手術と日帰り手術の違い

「入院手術」と「日帰り手術」について
同じ手術をしていると思っていませんか?

肛門科の入院手術と日帰り手術の違いについて解説します。

入院手術と日帰り手術とでは、その疾患の根治性が異なります。

そもそも入院設備を持っている施設が「日帰り」でできる手術をわざわざ「入院」でしているわけではありません!

入院手術は、より根本的な問題や複雑な疾患に対処する場合に選択されます。
全身麻酔や腰椎麻酔を使用し、肛門を締めている括約筋を弛緩させ奥の患部をまでしっかりとアクセスして手術を行うことができます。そのため、創部は日帰り手術よりも大きく、深くなりますが、根治性や手術の完全性は高くなります。

一方、日帰り手術は局所麻酔下や一部の部分麻酔を使用して行われることが一般的です。つまり肛門の括約筋を弛緩させなくても切除できる簡単な手術や疾患の場合に選択されます。創部は奥まで切除されていないので手術後のリカバリーが比較的早く、通院や通勤などの生活に迅速に復帰できる利点があります。

したがって、入院手術はより根本的な治療を必要とする場合に適しており、手術の深度や手術範囲が広いため、日帰り手術よりも術後の排便管理や痛みや出血を軽減させる処置が必要になります。
一方、日帰り手術は比較的軽度な手術や疾患に対して行われ、手術後の痛みやリカバリー期間が短いことが特徴です。

肛門科の入院手術と日帰り手術にはそれぞれメリットとデメリットがあります。

入院手術について

入院手術のメリット

  • 医療スタッフによる24時間体制のモニタリングが可能であり、術後の合併症や異常の早期発見・対応ができる。(退院後も24時間体制の対応が可能)
  • 手術後の痛み管理やケアがより効果的に行われる。
  • より複雑な手術や合併症のリスクが高い場合に適している。
  • 高齢の方や心疾患、糖尿病、肝臓病(肝硬変など)、腎臓病(透析中)の方でも手術が可能であり術後のケアも安心。
  • 入院保険(健康保険加入の場合)の医療給付還付金が受給される。

入院手術のデメリット

  • 入院期間が長くなり、患者様の生活に影響を与える可能性がある。
  • 病院での滞在による費用が高くなる場合がある。
  • 手術後のリカバリーに時間がかかることがある。

日帰り手術について

日帰り手術のメリット

  • 手術後、自宅での療養が可能であり、病院の滞在時間を短縮できる。
  • 通常、入院よりも医療費が低く抑えられる場合がある。
  • 手術が軽度で合併症のリスクが低い場合に適している。

日帰り手術のデメリット

  • 手術後の観察期間が短く、自宅での経過管理が求められる。
  • 予期せぬ合併症が発生した場合、速やかな対応が不可能である。(結果救急病院や入院施設の専門病院に駆け込むこととなる)
  • 疾患が大きく複雑な場合には不適切である可能性がある(再発が多い。治らない。)
  • 入院保険(健康保険加入)が適応されない為、還付金の支給が得られない。

適切な手術方法の選択は、患者様の症状や疾患の進行状況、健康状態などを総合的に考慮して行われるべきです。担当医との相談を通じて、個々の状況に最適な手術方法を選択することが重要です。

手術方法を決定する際には、以下のような要素を考慮することが重要です。

疾患の性質

疾患の種類や進行度によって、適切な手術方法が異なります。病状の重症度や手術の必要性を評価しましょう。

手術の目的

手術の目的や治療の目標を明確にしましょう。疾患の根治、症状の緩和、合併症の予防などを考慮します。

患者様の状態

患者様の年齢、健康状態、アレルギーの有無、手術に対する希望や不安などを考慮します。麻酔の適応性や回復力などを検討します。

医師の判断

肛門科専門医の専門知識や経験を信頼し、手術方法を決定する際には医師の助言を聞くことが重要です。

リスクと利点のバランス

各手術方法のリスクと利点を比較し、患者様のニーズや疾患に最も適した方法を選択します。リスクを最小限に抑えつつ、最良の治療効果を得ることが目標です。

これらの要素を総合的に考慮し、患者様と医師が共に納得できる手術方法を選択することが重要です。また、手術方法に関する十分な情報を収集し、疑問や不安を医師と相談することも大切です。

手術後の痛みについて

手術後の痛みを和らげる方法はいくつかあります。
以下は一般的な方法ですが、手術の種類や個々の状況によって異なる場合があります。

鎮痛薬の使用

手術後に処方された鎮痛薬を定期的に服用することで、痛みを軽減することができます。医師の指示に従って正確に服用しましょう。

冷却や温熱療法

手術部位に氷や冷却パックを当てることで炎症を和らげ、痛みを軽減することができます。肛門科手術後は温熱療法が有効です。患部を温めることで血行が良くなり痛みが和らぎます。医師に相談して適切な方法を選択しましょう。

適切な傷口ケア

医師の指示に従って傷口を清潔に保ち、適切に処理することで感染を予防し、痛みを軽減することができます。傷口に対する過度な摩擦や圧迫を避けるようにしましょう。

適切な排便コントロール

便秘を回避し緩下剤にて便を軟らかくすることで創部への負担が減ります。

適切な姿勢と動き

手術部位に負担をかけないようにするために、適切な姿勢や動きを心がけましょう。医師が推奨する運動や身体活動の制限に従うことも重要です。

栄養と水分摂取

適切な栄養と水分摂取を心がけることで、体の回復を促し、痛みを軽減することができます。特に蛋白質やビタミンを多く含む食事を摂ることが重要です。

これらの方法を組み合わせて、手術後の痛みを最小限に抑えることができます。しかし、どの方法が最も効果的かは患者様ひとりひとりの状況によって異なるため、医師の指示に従いながら適切なケアを行うことが重要です。